熱処理知識の泉

焼なまし

目的

焼なましを行う目的として大きく分けるとつぎのようになります。

  • 軟化による冷間加工性、切削性の向上
  • 結晶粒や組織を調整
  • 成分元素や不純物の偏析を拡散により除去又は均一化
  • 残留応力の除去

焼なましついて

焼なましには色々な種類があり、熱処理方法が違います。
材質や加工方法により焼なましの処理方法が変わります。
また焼なましの呼び方として、「焼鈍」「マルエー」「SR(ストレスリリース)」「アニール(アニーリング)」などがあります。

①完全焼なまし

もっとも一般的な焼なまし処理。冷間鍛造や引き抜き加工、切削加工前の処理によく施されます。
オーステナイト化温度以上(+30℃~50℃)に加熱し、一定時間保持したあとに炉冷し約500℃付近で放冷します。

完全焼なまし処理条件

②低温焼なまし

簡便な焼なまし処理方法であり、溶断後や鍛造後の硬度をさげたり、切削性、冷間加工性、残留応力の除去など、完全焼なまし処理の代用としてよく用いられます。
A1変態点以下の温度に加熱し、一定時間保持したあとに空冷又は炉冷する。

低温焼なまし処理条件

③応力除去焼なまし

鍛造、鋳造、圧延、引き抜き、機械加工や溶接などで発生する残留応力を除去する処理です。
材質や目的に応じて熱処理方法が変わります。
処理温度が高ければ高いほど応力はよく除去できますが、製品の形状によっては温度が高いと変形する恐れがあります。
また焼入れ・焼戻しをした材料の場合は焼戻し温度よりマイナス20℃以上が一般的である。

④球状化焼なまし

高炭素鋼において、被削性の向上と冷間鍛造、冷間圧造などの過酷な条件で加工する場合に施される処理です。
また軸受鋼では焼入れ焼戻し硬さと組織を安定させてベアリングの性能を引き出すことができます。
球状化前処理として焼ならし処理をすることがあります。
熱処理方法は700℃~800℃程度の間で長時間加熱または加熱、冷却を繰り返し後、ゆっくりと炉内で冷却しセメンタイトを球状化する操作。
材質により球状化のし易さ、求められる球状化率によいり、いろいろな熱処理方法がある。
4-1 長時間加熱法
4-2 繰り返し加熱冷却法
4-3 網状炭化物固溶法
4-4 等温変態法
4-5 徐冷法

⑤その他焼なまし
5-1 拡散焼なまし
5-2 光輝焼なまし
5-3 再結晶焼なまし
5-4 中間焼なまし
5-5 可鍛化焼なまし